2015.06.29更新

ご家族が亡くなって遺品を整理していたら遺言を発見することもあると思います。興味本位または遺言だと思わずに誤って封を開けてしまう場合があるかもしれません。
先日,公正証書遺言以外の遺言は検認手続が必要であることを紹介しましたが,検認手続前に封を開けてしまった場合はどうなるのでしょうか。

検認手続は,遺言の偽造・変造を防ぎ遺言を確実に保存するためのものですので,遺言の有効無効を判断するものではありません。そのため,検認手続の前に遺言の封を開けてしまっても,その遺言が無効になることはありませんが,封をしてある遺言を検認前に開封してしまうと5万円の過料を科せられる可能性があります。これは,誤って開封してしまったとしても同様です。
また、遺言書を発見した時に隠したり捨てたり、変造したりすると、法定相続人の場合は、相続人の地位を失うこともあります。

そのため,亡くなったご家族の遺言を発見した場合は,中を確認せずに,まずは家庭裁判所に検認の申し立てを行うことが賢明であるといえます。

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.06.26更新

検認手続は,法定相続人等の戸籍謄本などを用意して、相続開始地である遺言者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。家庭裁判所は、相続人や利害関係者を立ち会わせたうえで、遺言書を開封し、遺言の方式に関する事実を調査して調書を作成し,検認手続きが終了したときは,申立人に対して検認済証明書を付した遺言を返還し,検認に立ち会わなかった申立人や利害関係者には遺言を検認した旨を通知します。

検認手続は、遺言の有効無効を判断するものではないので、検認を受けなくても遺言が無効になることはありませんが,家庭裁判所で検認手続をしなかった人は5万円以下の過料に処せられることもありますので,注意が必要です。また,検認手続が行わないと遺された自筆証書遺言に基づいて不動産の登記をしようとしても、登記所では受け付けてもらえませんので,登記実務では公正証書以外の遺言は検認が必要とされています。

遺言者が書いたものではない、自由な意思で書いたものではない等の理由で遺言の無効を主張する場合は,検認手続ではなく,別の訴訟手続きを行う必要があります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.06.24更新

ご両親や配偶者が亡くなった後,亡くなった方の遺言が見つかった場合はどのような手続きをしたらいいでしょう。

通常,遺言書を発見した相続人は、遺言者が亡くなったことを知ったときは、遅滞なく家庭裁判所にその遺言書を添えて検認の申立てを行うことになります。検認とは,遺言の偽造・変造を防ぎ遺言を確実に保存するために,遺言の形式的な状態を調査確認する証拠保全の手続きのことで,検認の申立てがあった場合,家庭裁判所は遺言の方式及び遺言の事実状態を調査し,その結果を検認調書に記載することになります。この検認手続を経て,遺言の内容のとおりに遺産を分配することになります。
検認は,遺言の偽造・変造を防ぎ遺言を確実に保存するためのものですので,公正証書遺言の場合はすでに公文書となっていることから,検認は不要です。

そのため,亡くなったご家族の遺言を見つけた場合やご家族から遺言を預かっていた場合には,まずは,遺言がどのような形式で書かれているものかを確認し,公正証書遺言でない場合は,家庭裁判所に検認の申立てを行うことになります。

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.06.23更新

平成25年度税制改正によって,相続税法及び租税特別措置法の一部が改正されました。既に平成27年1月1日以降に発生する相続から適用されていますが,この相続税法改正に伴い,相続税はかからないと考えていた家庭にも課税対象が広がったといわれています。

特に今回の改正で影響が大きいと考えられるのは,基礎控除の引き下げが行われた点です。これまで,法定相続人が3人であれば,基礎控除は8000万円であったのに,今回の改正によって,4800万円にまで減少することとなりました。これを超える相続財産がある場合,課税対象となってきます。

本改正によって,課税割合が比較的高い首都圏等では,その課税割合は,2倍程度増加するとも言われています。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.06.15更新

先日より,遺言執行者を定めることのメリット,定める方法をご紹介しました。では,遺言執行者を誰に任せるのがいいのでしょうか。

遺言執行者は相続人全員の代理人とみなされて、相続人の代表として遺言の内容のとおりに手続を行うことが業務です。そして,遺言執行者は,未成年者と破産者以外は誰にでもなれますので,遺言によって相続人の方が選任されている場合も多いです。
しかし,遺言執行者の業務は財産目録の作成や報告義務など煩雑なことが多く、遺言執行者に選任された相続人の方に負担になる場合もあり,また,遺言の内容に不満を感じる相続人から非難を受ける可能性もあります。
このように遺言執行人となる相続人に負担を生じさせないために,利害関係ない第三者を遺言執行人とする場合も多く存在します。

ただし、第三者に指定する場合,遺言執行人の報酬は相続財産から支払われます。 基本的には,遺言で遺言者と遺言執行者間で定めておくことができますが,報酬に関する定めがない場合には相続開始後に相続人間と遺言執行者で協議するか、家庭裁判所で定めてもらうことになります。そのため,第三者を指定する場合には,事前に取り決めて遺言に示しておいた方が、相続手続きを円滑に進めることができます。

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.06.08更新

先日,遺言執行者を定めておいた場合,遺言執行手続において迅速に処理できるというメリットがあることをご紹介しました。では,遺言執行者とはどのように指定するのでしょうか。

遺言執行者は,未成年者と破産者以外は誰にでもなれますので,相続人も受遺者も遺言執行人になることができます。

そして,遺言執行者の指定方法としては,以下のとおりです。
①遺言で指定する方法
②第三者に遺言執行者の指定を委託する方法
③①②がない場合に利害関係人の請求により家庭裁判所が選任する方法

③の方法に関しては,遺された相続人の方々に遺言執行者選任の申立てを裁判所にしてもらわないとならないため,どうしても時間がかかってしまいます。
そのため,遺言を書く段階で遺言執行者を指定しておく方法が一番簡単な方法となります。
遺言を書く際には,遺言執行手続において迅速に処理するためにも,遺言執行者を指定してみてはいかがでしょうか。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.06.05更新

「遺言の執行」とは,遺言の内容を実現するための手続きのことをいい,遺言執行を指定または選任された人のことを遺言執行者といいます。

遺言執行者を定めておいた場合のメリットとは何でしょう。

遺言で不動産や預貯金を移転する場合,遺言執行が必要となりますが,遺言執行者がいない場合は,相続人全員で遺言執行を行うことになります。
相続人全員の協力を得て遺言執行できれば問題ないのですが,遺言内容が相続人の利益に反していた場合や相続トラブルがある場合は相続人全員の協力が得られない場合があり,このような場合に遺言執行者を指定し,遺言執行者に遺言執行させることになります。

遺言執行者は相続人全員の代理人とみなされて、相続人の代表として手続を行いますので、相続人全員で手続きを行う場合と比べ大幅に手間が省略され、迅速に処理することができます。特に不動産の遺贈などの場合は、遺言執行者が登記義務者である相続人の代理人となるので、スムーズに移転登記を行うことができます。

このように遺言執行者を定めておいた場合,遺言執行手続において迅速に処理できるというメリットがあります。

 

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.06.03更新

先日,自筆証書遺言を作成することをご提案いたしました。では,どのように遺言書を書よいのでしょうか。

自筆証書遺言は,公正証書遺言と異なり2名の証人や公正役場へ行くなど煩わしいルールはありませんが,法律に定められた方式に従っていないと無効となってしまいます。

といってもそこまで難しいルールは必要ではありません。以下の要件が充たされていれば,有効な自筆証書遺言となります。
①全文が自筆であること
②署名があること
③作成年月日の記載があること
④押印があること
⑤加除その他変更が法律に違反していないこと

特に注意が必要なのが,⑤加除その他変更が法律に違反していないことで,書いた遺言書を訂正したり,書き加えたりする場合,単に二重線で消して訂正印を押しただけでは無効となってしまいます。
有効な訂正・加除の方法とは,加除訂正部分に押印し,余白に訂正内容を記載し(「第○行中1字削除」など),署名をするというものとなります。
このような方法を誤ってしまってせっかく書いた自筆証書遺言が無効となってしまい,「争族」となってしまっては意味がありません。そのため,書き損じの場合は初めから書き直すほうが良いでしょう。

自筆証書遺言はルールにさえ従っていれば難しいことはありません。まずは,自筆証書遺言を作成してみてはいかがでしょうか。また,作成する際には,遺言書の付言事項でご自身の遺言の真意をご家族に伝えることも,円満な解決に資する場合がありますので,書いておくこともおすすめします。

 

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.06.01更新

先日より,判断能力が欠けることになってしまった場合には,本人保護のために成年後見制度を利用することをご紹介しました。では,成年後見人の業務とは,どのようなものでしょうか。

成年後見人の業務とは,本人の意思を尊重し,かつ本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら,必要な代理行為を行うとともに,本人の財産を適正に管理していくこととなります。もっとも典型的な業務としては,本人のために診療・介護・福祉サービスなどの利用契約を結ぶことと,本人の預貯金の出し入れや不動産の管理などを行うことが挙げられます。

成年後見人に選任された場合,まずは,本人の財産や収入を把握し,医療費や税金などの決まった支出を見積もり,医療看護の計画と収支の予定を立てて「年間収支予定表」を作成し,本人の財産に関する「財産目録」を作成し,裁判所に提出します。その後は,1年ごとに事務報告書,財産目録,資料などを裁判所に提出することになります。

特に,預貯金の流用など財産の管理が不適切である場合には,成年後見人を解任されたり,民事・刑事上の責任を問われることもありますので,本人の財産を他人の財産と混在させたりしないように注意することが必要になります。

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.05.28更新

認知症,知的障害,精神障害等によって,判断能力が欠けることになってしまった場合には,成年後見制度を利用して,本人を保護することが考えられます。それでは,成年後見の申立てをした場合,誰が成年後見人となるのでしょうか。

裁判所HPによりますと,平成21年には,配偶者,親,子,兄弟姉妹,その他の親族が成年後見人等(補佐人,補助人を含む)に選任されたものが全体の約63.5%であったのですが,平成26年には,その割合が約35%まで減少しています。それ以外の65%は,親族以外の第三者(弁護士,司法書士等)が成年後見人等に選任されています。この統計データからみると,5年ほど前までは成年後見人等に選任されたのは,主に親族だったのですが,現在は主に専門家等の第三者となっていることが分かります。一人暮らしの方や高齢の夫婦の方々等の場合には,身近に成年後見人として対応できる親族がいない場合も増えてきていること等がその原因と考えらます。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

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