2015.08.31更新

限定承認とは,相続した財産の範囲内で被相続人の債務を弁済し,余剰があれば相続できる制度であり,相続財産のうちで負債や遺贈を弁済してもなお余りがあれば,それを相続するという留保を付けるということです。
限定承認を行った場合,まずは,相続財産から被相続人の債権者に対して負債を弁済し,また,受遺者に対して遺贈を行います。そして,これらを弁済・遺贈してもまだプラスの財産が残っていれば,それを相続人が承継することになるので,相続人は相続債務について相続財産の限度を超えて弁済する必要はありませんので,プラスの財産だけを相続することができます。

しかし,相続放棄に比べて手続が複雑であること,共同相続人全員で申述を行う必要があることから,限定承認を利用する方は非常に少ないのが現状です。

特に,限定承認の申述が受理された後の相続財産の清算手続きが非常に煩雑となっています。
まずは,期間内(限定承認者の場合は5日以内,相続財産管理人の場合は選任後10日以内)に,限定承認をしたこと及び債権の請求をすべき旨の公告(官報掲載)の手続を行い,その後,法律にしたがって,弁済や換価などの清算手続を行っていくことになります。相続人が複数の場合は,申述の受理と同時に相続財産管理人が選任され,相続財産管理人が行うことになります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.08.28更新

相続放棄の手続は,放棄する相続人が,相続開始を知ってから3か月以内に,被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄申述書等の書面を提出する必要があります。相続放棄申述書の提出を受けた裁判所は,申述が方針にかなっていて,申述人の真意に基づくものであることを確認して,申述受理の審判を行います。

家庭裁判所から申述受理の審判を受けた場合,相続放棄を行った相続人は,その相続に関しては最初から相続人ではなかったものとして扱われます。そのため,相続放棄者の子や孫に代襲相続は行われず,遺産は残りの相続人で分割することになります。
なお,すべての相続人が相続放棄を行った場合は,相続人不在ということになります。

一度相続放棄の申述を行って,家庭裁判所から申述が受理されたら,原則として相続放棄の撤回はできません。そのため,相続放棄後に多額の財産が出てきたとしても相続放棄を撤回することはできません(詐欺、脅迫などの特別な理由がある場合は撤回できる場合がありますが,きわめて例外となります。)。
このように相続放棄の撤回は一度行うと難しいものになりますので,相続開始から3か月間の熟慮期間(相続人から家庭裁判所に請求することで熟慮期間の身長が可能ですが,必ずしも認められるとは限りません。)に慎重に財産調査を行うことが重要になります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.08.27更新

相続財産の範囲を調査した際に,被相続人の財産にマイナスの財産(負債)があった場合,それもすべて相続人が承継しなければならないのでしょうか。

被相続人が亡くなった場合,相続人らに相続が開始することになりますが,法律は,相続をするか否かについて相続人に選択権を与えています。
自己のために相続が開始されたことを知ってから3か月以内に,相続財産を負債を含め全部承継するのか(単純相続),財産の承継を全部拒否するのか(相続放棄),相続した資産の範囲内でのみ債務等の責任を負うのか(限定承認),の3種類の選択ができます。

単純承認は,相続人が被相続人の一切の権利義務を包括的に承継する制度であり,被相続人に借金があてば,相続人は自身の財産で弁済しなければなりません。

相続放棄は,相続開始によって包括的に承継された財産すべてを拒否することになりますので,相続放棄の手続を行えば,被相続人のプラスの財産もマイナスの財産もすべて受け継がなくてもよいことになります。

限定承認は,相続した財産の範囲内で被相続人の負債を弁済し,弁済した後,余剰があれば相続できるという制度です。

相続放棄と限定承認の手続きは,相続開始を知った時から3か月以内に行わなければならず,時間的な制限がありますので,相続調査を早めに行ったうえで相続するか否かの選択を行う必要があります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.08.19更新

相続財産にはマイナスの財産である借金も含まれますが,このマイナス財産は,被相続人も一番に家族に隠してしまいがちですので,相続調査がもっとも困難となります。

まずは被相続人のご自宅等の保管していそうな場所や郵便物から,契約書やキャッシュカード,利用明細等の書類がないかを探してみことが重要です。また、預金口座から返済として引き落とされる場合もありますので,預金通帳のお金の流れを調査して,借金の存在が判明する場合もあります。どうしても負債が判明しない場合は,クレジット情報などを管理している個人情報信用機関(JICCやCIC等)に対して、被相続人の情報開示を求めることも可能です。

また,住宅ローンについては,通常,団体信用生命保険の加入がローン実行の条件になっていますので,借主が亡くなれば保険会社がローンを全額一括で支払うことになり,住宅ローン自体がなくなります。この場合は,住居に設定されていた抵当権が消滅しますので,相続登記の際に抵当権抹消登記を申請することになります。

マイナスの相続財産は,相続放棄を行うか否かの決断の際に重要な事項となりますが,相続放棄は期限がありますので,調査自体早めに行うことが大切です。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.08.17更新

被相続人の相続財産として主なものは,預金です。被相続人の預金を調査する場合,まずは,預金通帳でお金の流れを調査することになります。
また,被相続人の生前の郵便物を調査することによって,財産管理を行っていた金融機関が判明することもあります。

預金通帳が見つかった場合,被相続人が利用していた金融機関の支店に預金残高証明書を発行してもらいます。これによって,現在の預金残高が判明します。

預金通帳を探しても見つからないような場合は,利用していた可能性のある金融機関に対して被相続人の口座の有無を確認する必要があります。ここで口座が発見されれば,上記のとおり預金残高証明書を発行してもらいます。

預貯金債権の時効は10年ですので,10年を経過すると銀行は相続人に対して預貯金を返さなくてよく,結果,預金は銀行のものとなります。このような休眠口座が多いといわれていますので,被相続人の相続財産の調査は非常に重要となります。

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.08.14更新

被相続人が土地や建物等の不動産を所有していた場合には,どこの土地・建物を持っていたのか,その評価額はいくらなのかといったことを調べる必要があります。

亡くなったご家族の所有していた不動産の調査をする場合は,まず,ご自宅から「権利書」や「登記識別情報」または「固定資産税の納付書」などを探してることが有効です。特に,固定資産税の納税通知書は毎年6月頃に市区町村から送付されてきます。この納税通知書には,所在地、面積、評価額等が記載されていますので、不動産の大体の内容を把握することが出来ます。

固定資産税の納付書さえ見つかれば,権利書などが発見できなかったとしても,市役所などにある名寄帳から,亡くなったご家族被が所有していた土地や建物が分わかります。それらが分かれば、法務局に出向いて、土地や建物の権利関係が記載された「登記事項証明書」を取得することになります。

また,土地や建物の所在地の市町村役場から、「固定資産評価証明書」を取得すれば、不動産の価値の目安が分かります。

法務局や市役所等からこれらの書類を入手する際には,被相続人との続柄が分かる戸籍謄本や身分証明書などが必要となりますので,用意していくことも必要です。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.08.07更新

相続人は,相続開始から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ここで,相続人が承継した権利義務のことを相続財産といいます。簡単にいえば,亡くなったご家族が持っていた現金や預貯金,不動産や株・社債などのプラスの財産と借金やローン,連帯保証人となっていた場合の連帯保証人の地位などのマイナスの財産すべてをひっくるめた権利義務のことになります。

逆に,被相続人の一身に専属し,他人が取得・行使できない権利である一身専属権や祭具・墳墓といった祭祀財産は相続財産とは区別され,相続人に承継されることはありません。
一身専属権は,個人に与えられた年金の受給権や許認可(個人事業の営業許可など)などのことであり,祭祀財産はお墓や位牌・仏壇などのものが例として挙げられます。

また,被相続人の死亡により発生する相続人等の固有の権利である生命保険金や死亡退職金なども相続財産ではありませんが,相続税との関係では,みなし相続財産として課税財産になることがありますので,注意が必要です。

以上のとおり,プラスとマイナスの相続財産を相続人らは承継し,後の遺産分割で分けることになるのですが,この際,全体の相続財産を把握して,相続放棄などの決断を行わないといけないことから,相続財産の調査が必要になります。
特に,相続放棄等の手続きは、「相続の開始を知った日から3ヶ月」と非常に短い期間のうちにしなければいけませんので,できる限り早く調査して把握する必要があります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.08.03更新

遺産分割を行うためには,まずは,相続人の確定が必要となります。
相続開始により,被相続人の相続財産は,相続人の承継され,相続人が複数いる場合は相続財産は相続人たちの共有となります。この共有状態を解消し,相続財産の帰属を決定することが「遺産分割」となるのです。そして,遺産分割は,相続人全員で行う必要があり,一人でも相続人が欠くと無効になってしまいます。そのため,相続人が誰なのかを遺産分割の前までに確定する必要があるのです。

相続人の確定の方法は,被相続人の出生時から死亡に至るまでの身分関係を戸籍関係書類を取り寄せて,相続資格のある者を確定し,さらに,相続資格のある人が現在も生存しているかどうかも戸籍謄本などにより確認することになります。 
戸籍の取得は,本籍地の市町村役場の戸籍担当窓口で請求するか,遠方であれば,郵送で取り寄せることも可能です。また,請求できるのは、原則としてその戸籍に記載されている人や直系親族などですので,相続人であれば請求は可能です。相続人でないお嫁さんが代わりに請求する場合は,お嫁さんは代理人となりますので,相続人の委任状があれば請求できます。

なお、弁護士等に相続手続を依頼する場合は,戸籍関係書類は職務上請求書(統一用紙)により請求することが認められていますので,戸籍の取得から任せることも可能です。
特に,出生時からの戸籍となると,読み解くことが難解である場合もありますので,ご不明点があれば専門家に相談してみることもおすすめです。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.07.29更新

被相続人の最後の意思を尊重する趣旨から,遺言がある場合は,遺産分割をすることなく相続人または受遺者に財産承継することが可能となります。また,遺言は,被相続人の最後の意思を遺したものですので,亡くなったご家族の気お気持ちを知るためにも,葬儀等がひと段落した場合は,遺言書がないかどうかを調べましょう。

通常は,ご家族が遺言を遺した旨をご遺族に伝えていると思いますが,不慮の事故等で伝える間もなかった場合等もありますので,生前に被相続人が住まわれていた住居などを調べることが有効です。
自筆証書遺言の場合は,住居等を調べるしか見つける方法がないのですが,公正証書遺言であれば,公証人役場で被相続人作成の遺言があるかどうかを検索できます。
公正証書遺言を調べる場合は,遺言が見つからないときをご確認ください。

また,遺言が見つかった場合は,遺言が見つかったときをご確認ください。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.07.27更新

被相続人(亡くなられたご家族)の死亡後に行うものとしては,葬儀の準備の他に①死亡診断書の取得②死亡届の提出③埋(火)葬許可の取得等の手続が必要になります。
死亡届は,親族,親族以外の同居者,家屋もしくは土地の管理人,後見人,保佐人,補助人,任意後見人等が,死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡があったときは,その事実を知った日から3か月以内)に,死亡地,志望者の本籍地,届出人の所在地いずれかの区役所・市町村役場に死亡届を提出します。

次に,取引先の金融機関へ連絡する必要があります。金融機関に対し,死亡届を提出するか,もしくは提出しなくても金融機関が被相続人の死亡を知ると,禁輸機関の口座は凍結されてしまいます。口座が凍結されますと,公共料金などの自動引き落としも行えなくなりますので,自動引き落とし等を行っている場合には,公共料金などの名義人や支払方法の変更も速やかに行う必要があります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

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