2016.03.29更新

前回の続きで,相続財産は時価3000万円の自宅不動産のみで,家を出ている次男から自宅に住んでいた長男に対し,自宅を売却し,その半分を自分に渡すべきだ,渡せないのであれば自宅の時価3000万円の半分である1500万円を払えと言われてしまった事案の解決についてご紹介します。

自宅の評価額については,次男の弁護士は,不動産業者の査定額として時価3000万円という金額を提示してきましたが,不動産業者の査定額は,実際に売却できる金額よりも高値であることが多いのです。こちらは不動産評価の専門家である不動産鑑定士の鑑定を依頼したところ,評価額は2000万円となりました。

そのため,寄与分と評価額での主張を行ったところ,最終的には長男から次男に対して600万円を支払うことで決着することとなりました。次男が依頼した弁護士の当初提示案である1500万円から900万円ほど下げての解決となったのです。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.03.24更新

前回からご紹介している事案は,相続財産は時価3000万円の自宅不動産のみで,家を出ている次男から自宅に住んでいた長男に対し,自宅を売却し,その半分を自分に渡すべきだ,渡せないのであれば自宅の時価3000万円の半分である1500万円を払えと言われてしまった事案です。

この事案では,どのように解決したのでしょうか。

長男は,次男の依頼した弁護士も主張するとおり,介護のために必要なお金や自宅の固定資産税等を父の預金口座から引き出して使用していたこともあったため,やはり次男のいうとおり,自宅を売却しないのであれば,自宅の時価の半分である1500万円を次男に払わなければ解決できないかもしれないと考えました。しかし,そのような資産がないことからどのように進めたらよいかを弁護士に相談されました。

長男が,介護のために多大な負担をしてきた場合,それは寄与分として,相続において有利に斟酌されます。父が要介護認定を受けていたのであればその要介護認定の内容,程度,介護方法として入院介護,在宅介護のいずれであったか等,様々な要素を検討し,寄与分の有無及びその程度が決まります。上記事案は,3年前から父は要介護認定4を受けており,在宅介護の状態であったことから相応の寄与分が認められ得る事案でした。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.03.22更新

実際にご相談があった相続事案をご紹介いたします(個人情報等の点から,実際の内容とは一部異なります。)。

すでに母は他界し,遺された父の所有する自宅で長男夫婦が父と同居しており,次男は,家を出てマンションを購入して家族で住んでいました。父は認知症と診断され,ここ数年間の間,長男夫婦が父を介護してきました。この度,父が亡くなり,父親の相続財産は,自宅である戸建住宅とわずかな貯金のみであり,遺言等を残してはいませんでした。これまで介護をしてきた長男は,当然のように自宅を相続するものと考えていました。

しかし,葬儀が終わった頃,突然,次男が弁護士を立てて,自宅を売却し,その半分を自分に渡すべきだ,渡せないのであれば自宅の時価3000万円の半分である1500万円を払えと言ってきたのです。次男は,弁護士を立てて,父の介護の際に,父の預金口座も実質管理していた長男が父の預金の一部を自分のために利用したのだから,介護によって長男も利益を受けている以上,きっちり半分ずつ相続すべきだと主張してきたのです。

次回からは,どのように解決したのかをご紹介いたします。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.03.17更新

現在,親の遺産をめぐって,兄弟間で相続争いが生じるケースが増えています。

お父様若しくはお母様が亡くなった際,兄弟・姉妹間で相続により,もめてしまうケースが多くみられます。「相続争いなんて,お金持ちの家の話でしょう?」,「うちには争うほどのお金がないから大丈夫。」と思って,相続の問題を先延ばしにしていた場合こそ,亡くなった後に兄弟間で相続に関して争いになるケースが多くなっているのが現状です。実際,家庭裁判所での遺産分割を行った案件の7割以上が,相続財産が5000万円以下の場合となっています。

これは,昔であれば,親と同居する長男が親の財産を相続することがいわば当然だと思われていたものが,兄弟均等に分け合うことこそが当然であるという意識に変化してきたことが一番の原因です。他にも,昨今の景気の悪化から,経済状況が悪化したために,少額であっても親の遺産をあてにしていることが増えていることも一因と考えられます。

次回は,解決事例を紹介しつつ,不動産相続問題をご説明します。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.02.25更新

 先日より,不動産購入が相続税対策として有効ではあるが,相続税の節約だけでは予期せぬ紛争を残してしまう危険性があることについてご説明しました。

 そのため,相続対策は,賃貸不動産を購入して将来納めるべき相続税を節約すればよいというわけではなく,遺産分割協議後の相続人の状況をしっかりと認識した上で,具体的な対策を行う必要があります。

 例えば,資産を分散させるために複数の賃貸不動産を購入しておき,どの不動産を誰に対して相続するのかを遺言でしっかりと遺しておくというのはひとつの解決方法でしょう。
この遺言には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言の3つの方法がありますが,将来の紛争を防止するためには,公正証書遺言が最も適切です。また,遺言を遺す際には,誰に,何を相続させるという,単純な相続財産の分け方のみを遺すのでは足りません。どうしてそのような遺言を遺したのかを付言しておいた方がよいケースもあります。
例えば,生前からずっと自身の介護をしてくれた長男に対して比較的価値のある不動産を遺す場合には,その趣旨を遺言において他の相続人に説明しておくことによって紛争を抑止することができる場合があります。

 さらに,相続財産が不動産のみである場合,相続税の納税資金が不足してしまうため,一部現預金や保険の形で相続財産を遺す必要もあるでしょう。

 以上のとおり,相続人を想って節税のみを目指し,ただ単に収益力のある不動産を購入するような相続対策をしたのでは,かえって「争族」が生じ,問題を残しかねません。様々な視点から相続の問題をしっかりと考え,万全の対策を講じて初めて相続対策をしたといえるでしょう。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.02.23更新

 先日は,賃貸不動産の購入は,相続対策に有効であるという点をお伝えしましたが,では,賃貸不動産を購入して,相続税対策を行うだけで相続対策としては十分でしょうか。

 賃貸不動産の購入は,上記のとおり,相続財産の評価額を下げることができますので,納めなくてはならない相続税を低く抑えるという意味では,遺された家族の相続税支払額を低く抑える効果があります。しかし,例えば,節税対策として購入した不動産が,相続人間で分割することが困難な賃貸不動産である場合は,遺産分割時において問題が発生します。

 遺言書がない相続手続では,被相続人が亡くなった後,全ての相続人間で遺産分割協議を行います。この遺産分割協議において,相続財産が1棟の分割困難な賃貸不動産である場合,遺産分割協議において相続人間の共有として遺産分割をせざるを得ないと思われます。

 複数の相続人の共有となった場合,相続人が売却を希望したとしても,共有不動産の売却には,事実上,共有者全員の同意が必要となります。相続人全員の同意が得られないと,不動産を売却することはできません。

 また,相続人間で共有していく場合,賃貸不動産の大規模な改修や建替えも容易ではありません。大規模な改修や建替えにあたっては,相応の費用が発生しますので,相続人間で改修や建替えの必要性について意見が対立してしまうことがあります。この場合,本来すべき改修や建替えをすることができず,結果として不動産の価値を大きく低下させてしまう危険もあります。

 さらに,共有者の一人が亡くなった場合は,亡くなった共有者の持分は,その相続人に相続されます。このような次の世代への相続が発生した場合,共有者が増え,権利関係がさらに複雑化してしまう危険もあります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.02.19更新

 平成27年1月1日に改正相続税法が施行され,相続税の基礎控除が減少したことに伴い,従来よりも相続税対策の必要性が出てきました。そのため,賃貸マンションや賃貸アパート等の賃貸不動産を購入して将来の相続税を減らそうと考えている方も増えてきています。

 なぜ,賃貸不動産を購入すると将来の相続税が減ると考えられているのでしょうか。

 賃貸不動産を購入することによって将来の相続税が減少する理由は,不動産を相続する場合,相続税の基準額を大幅に下げることにあります。
 預貯金や株式等を相続する場合の評価額は,原則として預貯金額や株式の時価によることになりますが,他方,不動産を相続する場合,その不動産の時価を基準として相続税を算定するのではなく,土地であれば路線価,建物であれば固定資産税評価額をもとに,資産の評価がされ,相続税が算定されます。路線価や固定資産税評価額は,一般に,市場で取引されている価格(時価)よりも低額であり,しかも,その土地・建物が賃貸されていることによって,納税額が大幅に低くなります。

 したがって,資産を,賃貸不動産として保有することは,一般に相続税対策として有効と言われています。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.01.12更新

教育資金一括贈与時の非課税制度について紹介しましたが,もう少し詳しくご説明したいと思います。

この非課税制度の対象となるのは、30歳未満の人が「直系尊属」から受ける贈与であり,親から子,祖父母から孫への贈与が対象になります。また,贈与されたお金の使い道は教育資金に限られます。具体的には,授業料などの学校へ直接支払う場合は1500万円まで,そのうち500万円までは,学校以外の習い事にも使えます。

そして,贈与されたお金は金融機関の教育資金口座に入金する必要があり,贈与した人は,この金融機関を通して「教育資金非課税申告書」を税務署に提出することで初めて非課税になります。また,教育資金口座は贈与を受ける者1人につき1つの金融機関に限られ,途中での変更はできませんし,一旦贈与した金銭は,取り返すことはできません。

このように贈与されたお金を金融機関の教育資金口座に入金するわけですが,名義は贈与を受ける者の名義となり,名義人若しくはその法定代理人である親が,教育資金口座から教育資金を引き出し,その際に,教育機関等からの領収書を受け取ることが必要となります。

そして,先日ご説明したとおり,贈与を受ける者が30歳になった時に,口座に残った資金に贈与税がかかることになります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.01.07更新

平成25年の相続税改正において,学費の贈与に関しては最大1,500万円の非課税制度が設けられました。

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、個人(30歳未満に限る。)が、教育資金に充てるため、 その直系尊属と信託会社との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合等は,その信託受益権等のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入されません。

要は,祖父母からお孫さんへ教育資金として贈与する場合,その贈与する金銭を信託銀行などに預けておき,そこからお孫さんの教育資金を支出していった後,お孫さんが30歳に達したときに預け入れた資金が余った場合にはその余った部分について贈与税がかかり,余らなければ,預けた1500万円には贈与税がかからないという制度です。

 

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.01.05更新

養子縁組はメリットだけではなく,当然にデメリットも存在します。

まず,ひとつめは,相続人が配偶者のみの場合に養子縁組を行うと,配偶者の税額軽減の枠が少なくなる点です。
子供がおらず,甥や姪を養子にした場合,養子縁組前は配偶者の税額軽減は3/4ですが,養子縁組後は1/2になってしまいます。そのため,今後の配偶者の生活のために,多くの財産を残してあげたいと思っていても,配偶者への財産に相続税が課税されてしまう場合があります。

二つめは,相続人が増えることにより遺産分割がまとまらなくなる可能性が増える点です。
養子も法定相続人ですから,遺産分割協議を行う一人ですので,養子縁組をした分,法定相続人が増えます(1人若しくは2人とはなりますが。)また,相続人が増えたことによって,他の相続人から相続分が減ったという不満がでることも考えられます。

三つめは,未成年者を養子にした場合,未成年者は単独で法律行為を行えない点です。
未成年者が,法律行為を行うには法定代理人の同意が原則として必要となりますので,遺産分割協議は法定代理人が未成年者本人を代理することになります。しかし,孫養子の場合,未成年者の法定代理人である親(被相続人にとっては子)も相続人の一人となりますので,親と子の利害が対立してしまって法定相続人になることができない場合があります。この場合は,未成年者後見人を立てて,遺産分割協議を行うことになります。
 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

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