2016.05.19更新

今回紹介したケースでは,3000万円のマンション購入資金について特別受益に該当し,かつ持戻免除の意思表示がないことを前提に,次男の相続分がないケースをご紹介しました。
しかし,生前贈与については,贈与者が持ち戻し計算をしなくてよいという意思表示,持戻免除の意思表示をすることが考えられ,この持戻免除の意思表示は有効です。そして,この持戻免除の意思表示は,明確に示されていない場合であってもその意思表示があったと認定され得るため,黙示の持戻免除の意思表示の有無をめぐり争いが生じることがしばしばあります。例えば,本件において,3000万円を次男に生前贈与したけれども,これは昔父親が病気を患ったときに数年間,同居して面倒を見てあげた代わりに贈与してもらったのだから,父としては,贈与した3000万円は相続の時には考慮しない趣旨で贈与したとして,次男が持戻免除の意思表示があったかどうかを争う可能性もあります。

上記のようなケースにおいて,相続時に争いが生じないためには,やはり贈与者が,どのような意図で生前贈与したのかを遺言等で遺しておくことが有益でしょう。父が,生前,マンションの購入資金として贈与した3000万円について,持戻免除の意思があるかどうかを遺言にはっきり記載しておけば,将来,相続人の間での争いを防ぐことができたと考えられます。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.05.17更新

生前贈与があった場合は,どのように相続分を算定するのでしょうか。

共同相続人の中に被相続人から生計の資本として生前贈与を受けるなどの特別の受益を受けた者がいる場合には,相続に際して,この贈与を相続分の前渡しとみて,相続分の計算上,贈与を相続財産に持ち戻して相続分を算定します。
この「生計の資本としての生前贈与」とは,居住用不動産の購入資金に関する贈与が典型例であり,本件の3000万円が次男のマンションの購入資金である場合は,特別受益に該当することが考えられるケースでした。

本件事例で,3000万円全額が特別受益であるとした場合,次男は,以下の計算より結局,父の財産を相続しないこととなり,自宅と預貯金を母と長男が相続することが考えられます。

相続財産:自宅不動産3000万円+預貯金1000万円+生前贈与3000万円=7000万円  

次男の相続分:7000万円×1/4(法定相続分)-生前贈与3000万円=-200万円<0円

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.05.12更新

前回ご紹介したのは,価値3000万円の自宅の土地建物と1000万円の預貯金が相続財産である場合,配偶者に全てを相続させたいが,他の相続人である子供にも法定相続分を渡さなければいけないのか,という事例でした。
事例のとおり,相続人が配偶者と子供2人の場合は,法定相続分は,配偶者1/2,子供がそれぞれ1/4となりますので,子供に対して1000万円の相続分を渡さなければいけなくなります。この点,遺産分割で,すべての財産を配偶者に,という合意をすれば問題ありませんが,合意がなければ相続分を渡す必要があります。

しかし,本件では,母は,父の通帳等を確認していたところ,実は次男がマンションを購入するにあたって,長年持っていた株を売却して換金した3000万円ほどの現金を贈与していました。

このような生前贈与があった場合,相続分の算定はどのようになるのでしょうか。

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.05.10更新

父の所有する自宅で長男夫婦が父母と同居しており,次男は,結婚してマンションを購入し,そこで妻子と住んでいました。この度,父が亡くなり,父の相続財産は,自宅である3000万円ほどの価値のある戸建住宅と総額1000万円ほどの預貯金であり,遺言は残していませんでした。

長男としては,母には父との思い出の自宅で,ある程度ゆとりのある生活をしてほしいと思い,父の遺産を全て母に相続させたいと考えていました。しかし,次男にも法定相続分として,父の相続財産の4分の1を相続する権利があります。

この場合,次男との遺産分割の話し合いをするにあたって,次男との合意がない限り,次男も父の相続財産の4分の1を相続することになるのでしょうか。

次回は,上記事例がどのような解決となったのか,解決方法をお伝えします。

投稿者: 吉川綜合法律事務所