2016.03.31更新

前回まで,自宅不動産が唯一の相続財産である場合の解決方法をご紹介してきました。
上記の解決においては,寄与分,自宅評価に関する長男の主張が認められていますが,実際の相続トラブルにおいては,これらの主張が認められるのは容易ではありません。
例えば,上記の主張をするにあたっては,最低限,介護状況に関する資料の収集,父の預貯金口座,支払先等に関する全ての金銭出納状況の精査等が必要となります。また,不動産の評価に関しては,そもそも相手が提示してきた査定額が高額なのかどうかを判断しなければならず,仮に高額だと考えたとしても,誰に不動産評価をお願いすればよいか,評価を依頼したとしてもその評価額が自分にとって有利な評価額となるのか等の問題もあります。

相続問題が起きてしまった場合,上記事案とは異なり,親族内の話し合いで解決できる場合もありますが,他方で上記事案のように解決のために複雑な手続を踏まなければならない場合もあります。最近では一次相続未解決の二次相続(上記事案では,母の相続が解決していない中で,父がお亡くなりになる場合)のご相談を多くいただきますが,そのような場合には親族内での解決が非常に困難です。

相続問題が起きた場合,親族内での話し合いによる解決が妥当かどうか等の点については,第三者の意見を聞きながら慎重に決めていく必要があります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.03.29更新

前回の続きで,相続財産は時価3000万円の自宅不動産のみで,家を出ている次男から自宅に住んでいた長男に対し,自宅を売却し,その半分を自分に渡すべきだ,渡せないのであれば自宅の時価3000万円の半分である1500万円を払えと言われてしまった事案の解決についてご紹介します。

自宅の評価額については,次男の弁護士は,不動産業者の査定額として時価3000万円という金額を提示してきましたが,不動産業者の査定額は,実際に売却できる金額よりも高値であることが多いのです。こちらは不動産評価の専門家である不動産鑑定士の鑑定を依頼したところ,評価額は2000万円となりました。

そのため,寄与分と評価額での主張を行ったところ,最終的には長男から次男に対して600万円を支払うことで決着することとなりました。次男が依頼した弁護士の当初提示案である1500万円から900万円ほど下げての解決となったのです。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.03.24更新

前回からご紹介している事案は,相続財産は時価3000万円の自宅不動産のみで,家を出ている次男から自宅に住んでいた長男に対し,自宅を売却し,その半分を自分に渡すべきだ,渡せないのであれば自宅の時価3000万円の半分である1500万円を払えと言われてしまった事案です。

この事案では,どのように解決したのでしょうか。

長男は,次男の依頼した弁護士も主張するとおり,介護のために必要なお金や自宅の固定資産税等を父の預金口座から引き出して使用していたこともあったため,やはり次男のいうとおり,自宅を売却しないのであれば,自宅の時価の半分である1500万円を次男に払わなければ解決できないかもしれないと考えました。しかし,そのような資産がないことからどのように進めたらよいかを弁護士に相談されました。

長男が,介護のために多大な負担をしてきた場合,それは寄与分として,相続において有利に斟酌されます。父が要介護認定を受けていたのであればその要介護認定の内容,程度,介護方法として入院介護,在宅介護のいずれであったか等,様々な要素を検討し,寄与分の有無及びその程度が決まります。上記事案は,3年前から父は要介護認定4を受けており,在宅介護の状態であったことから相応の寄与分が認められ得る事案でした。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.03.22更新

実際にご相談があった相続事案をご紹介いたします(個人情報等の点から,実際の内容とは一部異なります。)。

すでに母は他界し,遺された父の所有する自宅で長男夫婦が父と同居しており,次男は,家を出てマンションを購入して家族で住んでいました。父は認知症と診断され,ここ数年間の間,長男夫婦が父を介護してきました。この度,父が亡くなり,父親の相続財産は,自宅である戸建住宅とわずかな貯金のみであり,遺言等を残してはいませんでした。これまで介護をしてきた長男は,当然のように自宅を相続するものと考えていました。

しかし,葬儀が終わった頃,突然,次男が弁護士を立てて,自宅を売却し,その半分を自分に渡すべきだ,渡せないのであれば自宅の時価3000万円の半分である1500万円を払えと言ってきたのです。次男は,弁護士を立てて,父の介護の際に,父の預金口座も実質管理していた長男が父の預金の一部を自分のために利用したのだから,介護によって長男も利益を受けている以上,きっちり半分ずつ相続すべきだと主張してきたのです。

次回からは,どのように解決したのかをご紹介いたします。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2016.03.17更新

現在,親の遺産をめぐって,兄弟間で相続争いが生じるケースが増えています。

お父様若しくはお母様が亡くなった際,兄弟・姉妹間で相続により,もめてしまうケースが多くみられます。「相続争いなんて,お金持ちの家の話でしょう?」,「うちには争うほどのお金がないから大丈夫。」と思って,相続の問題を先延ばしにしていた場合こそ,亡くなった後に兄弟間で相続に関して争いになるケースが多くなっているのが現状です。実際,家庭裁判所での遺産分割を行った案件の7割以上が,相続財産が5000万円以下の場合となっています。

これは,昔であれば,親と同居する長男が親の財産を相続することがいわば当然だと思われていたものが,兄弟均等に分け合うことこそが当然であるという意識に変化してきたことが一番の原因です。他にも,昨今の景気の悪化から,経済状況が悪化したために,少額であっても親の遺産をあてにしていることが増えていることも一因と考えられます。

次回は,解決事例を紹介しつつ,不動産相続問題をご説明します。

投稿者: 吉川綜合法律事務所