2015.09.30更新

相続税の納税方法は,原則として金銭一括納付となり,税務署に備え付けの納付書に納税額を記入し,金融機関で納付することになります。

しかし,遺産に預貯金や現金がなく,そのほとんどが不動産である場合は,金銭による一括納付は困難となってしまいます。このような場合は,数年に分けて納付する延納制度や,相続で取得した財産を納付する物納制度を利用することができる場合もあります。延納や物納を利用しようとする場合,申告書の提出期限までに税務署に申請し,税務署長の許可が必要となります。この許可を受ける際には,それぞれ要件にを満たす必要がありますので注意が必要です。

特に,延納制度は,相続税に加えて利子税も支払う必要があり,この利息は経費として処理することはできません。また,延納する場合は,担保提供する必要もありますので,利用する場合は,最後まで納付できるかどうかを慎重に検討する必要があります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.09.28更新

生命保険金や退職手当金は,民法上,相続財産ではなく受取人固有の財産となるので,遺産分割は不要ですし,相続放棄をしたとしても受け取ることができます。
しかし,相続税法上は,生命保険金や退職手当金もみなし相続財産として非課税の枠を超えた部分は,相続財産に取り込まれ,相続税課税の対象となります。
生命保険金の場合,被相続人が保険料負担者であり,被保険者である場合は,受取人の生命保険金等に対して相続税が課税されます。また,被相続人が保険料負担者であるが,被保険者でない場合には,生命保険契約に関する権利としてその取得者に相続税が課税されます。

そして,被相続人の死亡によって相続人が取得した生命保険金のうち,500万円×法定相続人の数(相続放棄した人を除く)の金額が非課税金額となり,複数の相続人が取得した場合は,この非課税金額をそれぞれが取得した生命保険金の金額に応じて案分します。

退職手当金も被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは,相続財産とみなされます。そして,生命保険金と同じように,500万円×法定相続人の数(相続放棄した人を除く)の金額が非課税金額となり,複数の相続人が取得した場合は,この非課税金額をそれぞれが取得した退職手当金の金額に応じて案分します。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.09.27更新

相続税の対象となる財産は,相続や遺贈によって取得した財産をいいますが,この財産とは,金銭に見積もることができる経済的価値があるものすべてが対象となります。
現金,預貯金,株券等の有価証券,不動産,債権などや営業権などの法律上の根拠を有しないものであっても,経済的な価値が認められているものも含まれます。また,被相続人が保険料を負担していた生命保険金や被相続人から死亡前3年以内に贈与により取得した財産なども相続税の対象になります。

反対に,相続税の対象にならない財産とは,取引の対象とはならない建物賃借権(借家権)や抵当権,質権などが含まれます。
また,相続又は遺贈によって取得した財産であっても,その財産の性質等から相続税の対象にはふさわしくない財産もあります。このような財産のことを非課税財産といいます。
例えば,墓所や仏壇などの祭祀財産,生命保険金及び死亡退職金のうちの一定金額,心身障碍者共済制度に基づく給付金の受給権,勤務先から支払われる弔慰金,交通事故による損害賠償金などが非課税財産の代表的なものとなります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.09.14更新

相続税とは,被相続人の死亡により、相続人が相続で取得する財産に対して課税される税金のことをいいます。この相続税は,相続等により財産を取得した者が自ら納税義務者となるかを判定し,税額を計算し,被相続人の死亡後10か月以内に申告書を作成して提出し,納付する,自己申告制度となっています。

しかし,相続税は,必ずしも相続によって財産を取得した人全員に課されるものではありません。
相続税が課税されるのは、大まかにいうと,遺産の総額が相続税の基礎控除額を超えた場合に限られます。平成27年1月1日時点では,基礎控除額は,3000万円+法定相続人の数×600万円と定められています。

また,小規模宅地等についての課税価格の計算の特例や配偶者の税額軽減の特例などの税額が軽減される特例もありますので,特例に該当する場合は,これを控除して相続税の税額を計算することになります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.09.11更新

相続人の間で遺産分割協議を行ったとしても,話し合いではまとまらない場合も残念ながら生じます。

この場合は,家庭裁判所へ遺産分割調停の申立を行うことになります。
遺産分割調停とは,家庭裁判所において,家事審判官と調停委員で構成する家事調停委員会が行い,実務上は,弁護士その他の専門家を含む2名の調停委員により,事件について聴取したり,調停の勧告を行うことになります。
調停において当事者である相続人間の合意が成立すると,調停調書が作成され,遺産分割がまとまることになります。

当事者間で合意が成立しない場合は,調停不成立となり調停は終了します。この場合,調停申立時に遺産分割の審判申立があったものとみなされますので,自動的に遺産分割事件は審判手続に移行し,審判手続が開始します。
審判は,家事審判官が単独で審判することになりますが,その際は,各相続人の遺産分割額に沿って,各財産の状況等を考慮して審判がなされます。

家事審判に対して不服がある場合は,即時抗告のみによってすることができます。この即時抗告は,審判の告知を受けてから2週間以内に行う必要があります。

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.09.09更新

共同相続人間で遺産分割に関して合意が成立した場合,協議の内容を証明するために,遺産分割協議書を作成することが一般的です。この遺産分割協議書は,共同相続人全員の署名・押印が必要となります。

特に遺産の中に不動産がある場合,遺産分割協議書は,「相続を称する書面」となりますので,遺産分割協議書により相続による取得登記が¥を行うことができますし,被相続人名義の預金の名義書き換えや,相続税の申告などの手続きにも遺産分割協議書が必要となります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.09.07更新

遺産分割とは,被相続人が亡くなった際に有していた財産につき,個々の相続財産の権利者を確定する手続です。

①遺言による分割
被相続人が遺言で,自宅の土地建物は奥さんに,預貯金の半分は長男に,もう半分は次男に,などと各相続人の取得すべき財産を具体的に定めていた場合などは,相続人全員もしくは遺言執行者によって分割が実行されます。

②協議による分割
共同相続人全員の合意で遺産を分割する手続のことをいい,被相続人が遺言で分割を禁じない限り,いつでも協議で遺産の分割を行うことができます。協議の成立には共同相続人全員の意思の合致が必要となり,全員の意思が合致していれば,分割の内容は共同相続人の自由に決めることができます。

③調停による分割
分割協議がまとまらないときや相続人間で協議ができない場合は,各共同相続人は家庭裁判所に分割を請求することができます。この場合,まずは調停手続きに付し,話し合いによる解決を行うことが一般的です。調停による分割では,調停委員が話し合いの仲介を行ってくれ,合意が成立した場合には,調停調書が作成され,この調停調書の記載には,確定した判決と同じ効力がありますので,強制執行も可能になります。

④審判による分割
遺産分割調停が不成立となった場合,審判手続きに移行することになります。審判においては,家庭裁判所の審判官が,遺産に属する物または権利の種類・性質,各相続人の年齢・職業・心身の情態・生活の状況などの一切の事情を考慮して分割することになります。
審判調書も調停調書と同様に,確定した判決と同じ効 力がありますので,相手方が任意に履行しない場合は,強制執行も可能になります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.09.04更新

所得税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について計算し,その所得金額に対する税額を算出して翌年の2月16日から3月15日までの間に申告と納税をすることになっています。これが,一般的に確定申告といわれるものです。
準確定申告とは,年の途中で亡くなった被相続人の所得税を相続人が申告・納税するものであり,相続人が,1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。

相続開始を知った日の翌日から4か月以内という時間的制限がありますので,この点に注意が必要です。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.09.02更新

単純承認は,被相続人の一切の権利義務を包括的に承継する制度ですが,①相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき,②熟慮期間中に限定承認や相続放棄の手続きをしなかったとき,③相続財産を隠匿,消費したときは,相続を単純承認したものとみなされ,相続放棄・限定承認の手続きをすることができなくなってしまいます。

①相続人が相続財産の全部または一部を処分したときの「処分」とは,財産の変動を生む法律行為だけでなく,財産の現状やその性質を変える事実上の行為も含まれると考えられています。例えば,相続財産である不動産を売却した場合は所有権の変動が生じる法律行為ですので「処分」にあたりますが,相続財産である不動産を取り壊す場合も財産の現状を変える行為ですので「処分」にあたります。一方で,相続財産から葬儀費用を支出する行為などについては,相続財産の処分にはあたらないと考えられていますが,その金額が社会的にみて不相当に高額のものであれば,処分にあたり,単純承認したとみなされます。
相続人に単純承認する意思がなく自己の利益を図るためではなくとも、相続財産の処分に該当するとされているため,注意が必要です。

②については,熟慮期間を過ぎてしまうと相続放棄・限定承認が出来なくなってしまうので,単純承認したものとみなされます。

③は,相続債権者にとって不利益となる,またはそのおそれがある相続人の背信的行為があった場合には,単純承認とみなされるというものであり,これに該当すると,限定承認・相続放棄した後でも単純承認とみなされますので,注意が必要です。

投稿者: 吉川綜合法律事務所