相続財産に賃貸不動産がある場合の相続対策3
2016.02.25更新
先日より,不動産購入が相続税対策として有効ではあるが,相続税の節約だけでは予期せぬ紛争を残してしまう危険性があることについてご説明しました。
そのため,相続対策は,賃貸不動産を購入して将来納めるべき相続税を節約すればよいというわけではなく,遺産分割協議後の相続人の状況をしっかりと認識した上で,具体的な対策を行う必要があります。
例えば,資産を分散させるために複数の賃貸不動産を購入しておき,どの不動産を誰に対して相続するのかを遺言でしっかりと遺しておくというのはひとつの解決方法でしょう。
この遺言には,自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言の3つの方法がありますが,将来の紛争を防止するためには,公正証書遺言が最も適切です。また,遺言を遺す際には,誰に,何を相続させるという,単純な相続財産の分け方のみを遺すのでは足りません。どうしてそのような遺言を遺したのかを付言しておいた方がよいケースもあります。
例えば,生前からずっと自身の介護をしてくれた長男に対して比較的価値のある不動産を遺す場合には,その趣旨を遺言において他の相続人に説明しておくことによって紛争を抑止することができる場合があります。
さらに,相続財産が不動産のみである場合,相続税の納税資金が不足してしまうため,一部現預金や保険の形で相続財産を遺す必要もあるでしょう。
以上のとおり,相続人を想って節税のみを目指し,ただ単に収益力のある不動産を購入するような相続対策をしたのでは,かえって「争族」が生じ,問題を残しかねません。様々な視点から相続の問題をしっかりと考え,万全の対策を講じて初めて相続対策をしたといえるでしょう。
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