2015.10.27更新

口座名義人である被相続人が亡くなった事実が金融機関に知られると,当該預金口座は一旦凍結され、引き出すことも入金することもできなくなります。これは,亡くなった被相続人の預貯金は,亡くなった時点から相続財産となるため,一部の相続人が勝手に預金を引き出して,他の相続人の権利が侵害されるのを防ぐためです。

遺産分割協議が成立した後,相続財産である預金口座の名義変更手続きを行うことができます。預金口座は,遺産分割協議がまとまったとしても,名義変更しなければ相続人のものでとして払い戻しはできませんので,必ず手続きを行う必要があります。

預金口座の名義変更手続については,一般的に,被相続人の戸籍謄本,相続人の戸籍謄本,遺産分割協議書,相続人の印鑑証明書,預金等の払戻をうける相続人の実印・取引印,預金通帳・証書等を金融機関に持参して,手続を行うことになります(必要書類については,金融機関によって異なるため,確認してください。)。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.10.23更新

被相続人が亡くなって,相続が開始された後,相続人が複数いる場合,相続財産は相続人の共有となります。この場合,法定相続人全員が法定相続分とおりの権利を取得していることから,遺産分割を経ないでも,法定相続分どおりの共同相続登記であれば,共同相続人全員が共同して申請することができます。
また,共同相続人の中の一人が全員のために申請することもでき,他の相続人の了解は不要です。
このような登記を,法定相続分による「相続」を原因とする登記といい,この冬季は,相続人の一人の債権者が債務者である相続人を代位して登記することもできます。

ただ,この法定相続分による「相続」を原因とする登記は,単に,相続人全員がその相続財産を共有していることのみを意味するものであり,その後,遺産分割を経て,それぞれの相続人の取得した財産ごとに登記するのであれば,あまり意味がないようにも思えます。

この登記は,遺産分割協議はまとまらないが,相続財産のうちの不動産を売却することだけは相続人間で合意ができているという場合に効果をあります。被相続人が亡くなった後,その相続財産である不動産を買おうと思う人は,相続人の法定相続分がどのくらいか等の情報はわからないので,自称相続人であると主張する人から買ったとしても,本当の所有者かどうか確認することはできず,リスクが高いために買うことができません。しかし,この共同相続登記を行うことで,所有者が相続人全員であることが明確になりますので,買い手も安心して買うことができます。

また,遺言が遺言者の意思に反して作成されたために無効を主張し,遺言執行による相続登記を阻止したい場合は,遺産分割を経ないで,この共同相続登記を行う必要があります。これは,遺言による相続は,被相続人から直接権利を譲り受けることになることから,共同相続登記から移転登記をすることはできないため,遺言執行を阻止するための手段となるからです。
しかし,遺言が有効である場合は,このような共同相続登記は無効となりますので,結局は,あまり有益な妨害手段とならない場合もあります。

さらに,この共同相続登記を行ってしまうと,もう一度「相続」を原因とする登記はできなくなりますので,遺産分割後の登記は「遺産分割」を原因とする登記となります。
そのため,「遺産分割」を原因とする登記がなされていた場合は,相続人間での争いがなった等の事情があったことが推認できてしまいます。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.10.21更新

被相続人が亡くなった際に,遺言が残されている場合は,遺言に基づく登記を行うことができます。この遺言がある場合は,ない場合にくらべて,登記手続において添付しなくてはならない資料の量が少なくなり,遺言者が亡くなっていること,遺言によって不動産の帰属先が決まっていること,帰属先である相続人が生存していること等を登記官に証明すればいいことになるからです。そのため,遺産分割による「相続」を原因とする登記を行う場合と比べ,被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本をそろえなくとも,死亡時の戸籍当方のみで足りますし,遺言があることから,遺産分割協議書も不要となります。

ただし,遺言が自筆証書遺言である場合は,家庭裁判所に遺言を提出し,検認請求を行って,裁判所の検認を受けなければなりません。検認を受けて初めて登記申請が可能になります。
この点,遺言が公正証書遺言の場合は,自筆証書遺言の場合と異なり,公証役場で原本が保存されていますので,偽造・変造の恐れはないため,裁判所の検認を経ずに登記申請が可能となります。
 

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.10.19更新

被相続人の死亡後,相続人が複数存在し,かつ遺言がない場合は,相続人全員で遺産分割を行い,それぞれの相続人に対して相続財産の帰属を決める,と今まで説明してきました。

通常は,この遺産分割が終了した段階で,不動産を取得した相続人が「相続」を原因として所有権移転登記を行うことになります。

必要となる書類は,被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改正原戸籍謄本,相続人の戸籍事項証明書,相続人の印鑑証明書,取得する相続人の住民票,遺産分割協議書,固定資産評価証明書等の書類が必要になります。

ただ,この遺産分割協議による「相続」を原因とする登記は,法定相続分による「相続」を原因とする登記がある場合は,一度「相続」を原因とする登記を行ってしまっているので二度目は使えませんので,遺産分割による「遺産分割」を原因とする登記を行うことになります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.10.14更新

相続登記とは,不動産の所有者が亡くなった場合に、その不動産の登記名義を被相続人から相続人へと名義変更することをいい,被相続人名義の不動産を、相続人が相続した場合に、被相続人から相続人に名義変更する手続きです。
この相続登記は相続税の納付のように,法律上,期限が定められているものではありませんので,相続が発生しても,相続登記を行わずに放置したとしても罰則等はありません。実際,相続登記を行っていない場合もあることはあります。

しかし,相続登記しないまま亡くなった被相続人の名義のままにしておくと,その不動産について売却や担保権設定等が出来なくなるという問題が生じます。そして,売却や担保権設定の必要性が生じた際に名義変更を行う場合に,相続人の一人が亡くなっていれば代襲相続が発生し,遺産分割協議に参加しなければならない相続人が増えて,手続が煩雑になる恐れもあります。

そのため,相続によって被相続人名義の不動産を取得した場合は,早めに相続登記を行っておいた方がいいと思われます。

 

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.10.09更新

配偶者に対する相続税は,同一世代間の財産移転であることや配偶者の老後の生活保障などへの考慮から,相続税の軽減措置が取られています。
この配偶者への税額軽減の特例は,婚姻の届出を行っている配偶者に限られ,内縁の配偶者には適用されませんので,注意が必要です。

この税額軽減の特例が適用されると,配偶者が取得した遺産額が1億6000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは,配偶者に相続税がかからないことになります。

この配偶者の税額軽減の特例については,小規模宅地の特例と同様に,申告期限までに遺産分割がまとまらなかった場合は,適用されません。そのため,申告後3年以内に遺産分割がまとまった場合は,更生の請求を行って,還付を受けることになります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.10.07更新

相続税の納付期限までに遺産分割がまとまらなかった場合,小規模宅地の特例などの減税効果の高い特例の適用ができないことは以前から書いておりますが,申告期限後3年以内に遺産分割がまとまれば,こうした特例の適用を受けて再申告することができます。

当初の申告額よりも実際の分割に基づく相続税の額が高い場合は,修正申告を行ったうえで,差額を納税します。
一方で,特例などの適用で,当初の申告額よりも実際の分割に基づく相続税の額が低い場合は,分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に,更生の請求を行って,差額を還付してもらうことになります。

通常,特例の適用を受けることで相続税は減額される場合が多くなっていますので,更生の請求を行う必要があることに注意してください。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.10.05更新

相続税は,相続によって財産を取得した相続人が,自らの取得した財産について相続税を計算して申告するものですから,相続税の納付前に遺産分割が完了していることが前提となります。なぜなら,遺産分割が完了していないと,相続人に帰属する財産がどれなのかがわからず,相続税が計算できなくなってしまうからです。

しかし,相続税の納付期限は,被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内ですので,それまでに遺産分割がまとまらない場合も発生してしまうことはよくあります。
このような未分割の場合であっても,相続税の納税は延期されることはなく,民法上の相続分の割合によって取得した財産の金額を計算し,これをもとに相続税を計算して,期限内に納付することになります。

この未分割での相続税申告は,減税効果の高い小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減の特例などの適用ができません。
申告期限から3年以内に遺産分割がまとまったら,こうした特例を適用して再申告することになります。

投稿者: 吉川綜合法律事務所

2015.10.02更新

小規模宅地の特例とは,相続又は遺贈によって取得した土地で,被相続人が自宅として住んでいた宅地,または事業のように供していた宅地などについては,宅地の評価額の一定割合を減額したうえで相続税額を計算することができる制度です。この特例は,相続又は遺贈によって取得した土地を対象としていますので,相続開始前3年以内に贈与によって取得した宅地や,相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地については,適用外となります。

小規模宅地の特例は,相続税の申告期限までに分割されていない場合には適用がありません。そのため,小規模宅地の特例を受けるためには,相続税の申告期限までに遺産分割が完了している必要があります。
ただし,申告期限後3年以内に分割された場合等は,更生の請求によって特例を適用することができます。

投稿者: 吉川綜合法律事務所