相続解決事案の紹介として,認知症の母による一人の相続人に全財産を相続させる旨の遺言が発見されたケースを紹介してきました。
今回の事案の解決においては,医療記録等の各種証拠があったため,遺言が無効であることをBさん側も認め,裁判外で遺言が無効であることを前提とした解決ができました。しかし,実際の相続トラブルにおいては,遺言を無効とするのは非常にハードルが高いのです。
日本では,遺言を遺すことがまだ一般的ではなく,若くて元気なうちに遺言を遺すことはそれほど多くはありません。ご高齢で遺言を遺す場合,その時点で,判断力,理解力等の点で何らかの問題を抱えていることが相当程度見受けられるところ,少しでも問題があればその遺言が無効になるというのであれば,自筆の遺言のうち,かなりの割合の遺言が無効となってしまいます。そのような結論は遺言を遺す者の意思を軽視するものですので,無効となるのはそのうち問題が非常に重要と考えられる一部に限られます。そう考えると,実際の裁判において,遺言が無効と判断されるのは,かなりハードルが高いといえます。