前回ご紹介した,認知症の母が妹に全財産を相続させる旨の遺言書を作成していたケースですが,どのような解決となったのでしょうか。
まず,依頼を受けて,母が入居していた老人ホームや通院していた病院等の医療記録,介護記録等を確認しました。すると,母が遺言を作成したとされる時期においては,母の認知症はかなり進んでおり,判断力,理解力,記憶力共に低下しており,医師やヘルパーに対して,意思の伝達が全くできない状況であることが判明しました。また,母の主治医からも,母の認知の程度は進んでおり,認知症のテストでも全ての項目に最も重度の認知の程度を示しており,遺言を書くことは到底できないとの意見も出されました。他方,遺言にある筆跡も,Bさんの筆跡とよく似ていることが分かりました。
そのような医療記録,介護記録,担当医の意見,筆跡の異同もあり,結局Bさん側は,遺言が無効であることを認め,母の財産を半分ずつ取得する内容の遺産分割協議書を作成することとなりました。