生前贈与の基礎控除が110万円まで認められていることから,親が子に対して,子供名義の預金口座に毎年110万円ずつ贈与し貯金しているという話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし,親が亡くなって相続が発生した先に,この子供名義の預金を相続人である子供が自身の預金だと主張しても,子供の預金としての実態が伴わないとの理由で,税務署から相続財産と認定されてしまうことはよくあります。このような生前贈与を子供の預金であると認められるためには,子供の預金であるという実態が必要になります。
この場合,贈与者である親と受贈者である子との間に,贈与をした・贈与を受けたという意思が必要になります。このような意思を証明するためには,贈与契約書を作成し,当該契約書に基づいて,口座振り込みによってお金が実際に移転していることが簡便です。そのため,親が作成した子供名義の口座ではなく,子供が印鑑・通帳などを管理している口座に,親の口座から振込む方法で行うことが重要になるともいえます。
また,贈与の実態を証明するためには,子供が贈与税の申告を行うことも重要です。この場合,基礎控除額の110万円を超える金額の贈与を行い,超えた分を贈与税として申告することになります。ただし,実際にお金の移動がなければ,結局子供の預金としての実態が伴わないと判断されてしまうので,その点は注意が必要です。