被相続人が亡くなった際に,遺言が残されている場合は,遺言に基づく登記を行うことができます。この遺言がある場合は,ない場合にくらべて,登記手続において添付しなくてはならない資料の量が少なくなり,遺言者が亡くなっていること,遺言によって不動産の帰属先が決まっていること,帰属先である相続人が生存していること等を登記官に証明すればいいことになるからです。そのため,遺産分割による「相続」を原因とする登記を行う場合と比べ,被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本をそろえなくとも,死亡時の戸籍当方のみで足りますし,遺言があることから,遺産分割協議書も不要となります。
ただし,遺言が自筆証書遺言である場合は,家庭裁判所に遺言を提出し,検認請求を行って,裁判所の検認を受けなければなりません。検認を受けて初めて登記申請が可能になります。
この点,遺言が公正証書遺言の場合は,自筆証書遺言の場合と異なり,公証役場で原本が保存されていますので,偽造・変造の恐れはないため,裁判所の検認を経ずに登記申請が可能となります。